勝ち虫 -ムネタケさんのとんぼ-

陸王のこはぜ屋さんの法被(はっぴ、半纏)はとんぼがプリントされてました。
とんぼは前にしか進まないという事で、縁起の良い虫、勝ち虫らしいです。
(実際は後ろにも進めるみたいですけど)

トンボ。
ぴーぴーぴー。(しかしなぜこの擬音?)

今から遡ること30年、バブル真っ只中。
短大を卒業したばかりで就職した新宿の一部上場企業。
就職試験を受けるために使った飛行機代5万円、帰りに現金で頂いたという夢のようなバブル。

就職した、一部上場の企業。そこにはデザイン室がありました。
同期は30人以上。その中に居たとても素敵な芸大漆芸専攻のムネタケさん
田舎者の私にとって、芸大卒の人なんて会った事もなければ、同期にいるなんて事も想像していなかったわけです、東京に出るという事は、地方では出会えない素敵な人と出会える機会に恵まれるのだなぁとハタチの私は思いました。

このムネタケさん。ほんとに素敵な人で、憧れていました。銀座にも連れて行ってもらって。(今考えると当時23歳のムネタケさんにとって地方出身の私の憧れは重たかったかも?と反省しつつ・・・)

わずか1年半で、東京に疲れ、地元に帰る私。ムネタケさんに、失礼にも、「漆の作品作ってください(頂戴)!」と相当厚かましいリクエストを何度も、何度も訴えておりました。

私が相当可愛かったのでしょうか?又はしつこ過ぎたのでしょうか?

なんとムネタケさん、送別会の時に、オリジナルの作品下さったのです!

涙が出るほど嬉しかったのです。20代で出会った初めての身近な芸術家。その作品を頂けるなんて!一生大切にしますと心に誓いました。
あれから30年。陸王のとんぼのトレードマークを見て、新たに沸き起こる感謝の念そして、
作品の意味。
ムネタケさんがくれたトンボを描いた漆のオブジェハタチそこらの田舎者に、何かしらのメッセージを送ってくれていたのですか?
田舎者の女よ、世知辛い世の中を前に進め!というメッセージだったのでしょうか?

あれから30年、前にしか進まない勝ち虫、51歳の私に相当大きな力を与えてくれています。

ムネタケさん、ワタシ来年52歳になりますが、前にしか進みませんから!

男運はいまいちですが、人とのめぐり合い運は最強の私。
ムネタケさんのトンボのお陰なのかな。